「死因不明社会」 [レビュー]
「チームバチスタの栄光」ほか、東城大学医学部付属病院関連シリーズを書いておられる、現役医師である海堂尊氏の作品である。これらの作品には、AIという死亡時画像診断の手法が出てくる。海堂氏は、このAIの普及をライフワークにしていると、本書で明かしている。
「死因不明社会」は、シリーズでおなじみの、厚労省の官僚である白鳥室長が、語り部となっている。
いわく、解剖率の低下している現在の日本では、医師は正確な死亡診断書を書く責務を放棄している。その理由は、官僚が解剖というものを重視していないので、診療報酬を落とそうとしないところにある。なぜならば、「僕たち官僚は、いくらふかふかのクッションであったとしても、解剖というイメージの悪いところを天下り先に選びたくないから、そこにお金を使いたくないんだよね」…ということらしい。
また、解剖ということ自体が、ご遺族の心情にそぐわず了解を得るのが難しい。これは納得。だから、ご遺体を傷つけないAIで、死因を明らかにするようにしませんか?
さて、死因を明らかにしないと何が起こるのか?
病院では、医療の質の低下につながる。たとえば、病気を持っていて治療されていた人の場合、その治療効果がどうだったのかを明らかにすることで、今後の医療に役立つだろう。今、治療法がないとされているがんの方の場合には、積極的な治療をしないということになっているけれど、ほんとうにその病気での自然経過でしょうか?その、がん以外の症状が起こっていることもあるだろう。それを治療することで、QOL(生活の質)を向上させることもできるのではないですか?それを統計立てることも、今後の医療に役立つのではないですか?また、医療事故も防げるのではないですか?がん意外の病気でも、全力で治療をしたとしても、不幸にして治療効果がなく不幸な転帰をたどる人もいる。そのケースと、事故をはっきり区別することで、医師の質も上がるのではないですか?
一般社会では、異状死は警察に届け出ているけれど、そこで行われるのは検視である。目で見て、異常と感じた場合に検屍(いわゆる解剖)が行われている。しかし、目で見ただけでわかりますか?殴打や虐待など、重要なサインを見過ごしているのではないですか?それは犯罪を助長し、安全な社会を脅かすことになりませんか?
全員に解剖を行うのは、コスト的にも人員的にも難しい。病理医の個人的な技量により、差も出る。AIならば、ご遺体を傷つけることなく、解剖が必要かどうかのスクリーニングができるのではないですか?
非常にわかりやすく、「死因が不明であること」のデメリットと、その改善方法が書かれている。多くの人の目に触れることで、無駄な出費という意識改革ができればいいなとそう感じる作品である。
専門用語もあるが、解説してくれているし。厚労省や利権争いなどにも触れている。皆さんに読んで欲しいと思う作品で、非常におもしろい。
余談であるが、パトリシア・コーンウェルの「検屍官」シリーズでは、日本にはこの技術はあるのかなと思うくらいの多くの検査があり、犯罪を告発していく。犯罪を許さないというその姿勢が、はっきりと書かれている。AIの普及は、スカーペッタの仕事量を軽減できるのかも。
さらにさらに余談。海堂氏の連作の中で、わたしが一番好きなのは、「ジェネラル・ルージュの凱旋」なんですが。みなさんは、いかがですか?厚労省の縛りの中、正しいことをするために、正しくないことでもしなければならないことがある。そういった矛盾は、どこの社会にもあるのかもしれません。「どうすればよかったんだ?」と投げかける、速水先生は、ほんとうにかっこいい。
海堂氏関連のHPはこちら↓
http://tkj.jp/kaidou/
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/blog/kaidou/
「死因不明社会」は、シリーズでおなじみの、厚労省の官僚である白鳥室長が、語り部となっている。
いわく、解剖率の低下している現在の日本では、医師は正確な死亡診断書を書く責務を放棄している。その理由は、官僚が解剖というものを重視していないので、診療報酬を落とそうとしないところにある。なぜならば、「僕たち官僚は、いくらふかふかのクッションであったとしても、解剖というイメージの悪いところを天下り先に選びたくないから、そこにお金を使いたくないんだよね」…ということらしい。
また、解剖ということ自体が、ご遺族の心情にそぐわず了解を得るのが難しい。これは納得。だから、ご遺体を傷つけないAIで、死因を明らかにするようにしませんか?
さて、死因を明らかにしないと何が起こるのか?
病院では、医療の質の低下につながる。たとえば、病気を持っていて治療されていた人の場合、その治療効果がどうだったのかを明らかにすることで、今後の医療に役立つだろう。今、治療法がないとされているがんの方の場合には、積極的な治療をしないということになっているけれど、ほんとうにその病気での自然経過でしょうか?その、がん以外の症状が起こっていることもあるだろう。それを治療することで、QOL(生活の質)を向上させることもできるのではないですか?それを統計立てることも、今後の医療に役立つのではないですか?また、医療事故も防げるのではないですか?がん意外の病気でも、全力で治療をしたとしても、不幸にして治療効果がなく不幸な転帰をたどる人もいる。そのケースと、事故をはっきり区別することで、医師の質も上がるのではないですか?
一般社会では、異状死は警察に届け出ているけれど、そこで行われるのは検視である。目で見て、異常と感じた場合に検屍(いわゆる解剖)が行われている。しかし、目で見ただけでわかりますか?殴打や虐待など、重要なサインを見過ごしているのではないですか?それは犯罪を助長し、安全な社会を脅かすことになりませんか?
全員に解剖を行うのは、コスト的にも人員的にも難しい。病理医の個人的な技量により、差も出る。AIならば、ご遺体を傷つけることなく、解剖が必要かどうかのスクリーニングができるのではないですか?
非常にわかりやすく、「死因が不明であること」のデメリットと、その改善方法が書かれている。多くの人の目に触れることで、無駄な出費という意識改革ができればいいなとそう感じる作品である。
専門用語もあるが、解説してくれているし。厚労省や利権争いなどにも触れている。皆さんに読んで欲しいと思う作品で、非常におもしろい。
余談であるが、パトリシア・コーンウェルの「検屍官」シリーズでは、日本にはこの技術はあるのかなと思うくらいの多くの検査があり、犯罪を告発していく。犯罪を許さないというその姿勢が、はっきりと書かれている。AIの普及は、スカーペッタの仕事量を軽減できるのかも。
さらにさらに余談。海堂氏の連作の中で、わたしが一番好きなのは、「ジェネラル・ルージュの凱旋」なんですが。みなさんは、いかがですか?厚労省の縛りの中、正しいことをするために、正しくないことでもしなければならないことがある。そういった矛盾は、どこの社会にもあるのかもしれません。「どうすればよかったんだ?」と投げかける、速水先生は、ほんとうにかっこいい。
海堂氏関連のHPはこちら↓
http://tkj.jp/kaidou/
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/blog/kaidou/
2008-08-10 12:47
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