「私の男」 [レビュー]
第138回直木賞受賞作である。
近親相姦が色濃く描かれていて、そのシーンには生理的な嫌悪感を覚えるので、賛否両論の作品である。しかし、作者が本当に描きたかったことは、「虐待の連鎖」かと思う。「親が与える子」への影響は強い。悪い影響を与えられた場合に、どういう結末がやってくるのか?そういったことではないかと思う。
主人公である「花」が結婚する章から始まる。結婚を控えているのに、父親の「惇悟」への愛情が語られる。そして、暗い過去が示唆される。なぜ、このふたりはこんなふうに、ひっそりと生きていたのか。その理由が過去にさかのぼりながら明かされていく。そこには、不幸な生い立ちがあり、二人だけの生活を守るために犯した罪の記憶がある。忌まわしい過去であるが、なぜか現実感に乏しい。
各章のタイトルに、その章を語る人の名前がさりげなく告げられている。完全な一人称であるがゆえに、本来なら同時並行で起こっているはずの、現実的な処理や人間関係等があっさり無視されている。たとえば、殺人の証拠を消すことや、当然起こるはずの事情聴取についての記載がないなど。現実感に欠けたまま話は進行していく。なので、この近親相姦もまったくの虚構であるという印象を持つ。だからこそ最後まで読めたように思う。
そのかわりに散りばめられてるのが、五感への訴えだ。いわゆる、情景や音や匂い。破滅を示唆する雷鳴の音、雪や海の情景、雨の匂い。そういったものが各シーンでタイミングよく散りばめられている。その情景は時に美しすぎ、また現実感が乏しくなる。そういった手法をとっているように思う。
最終章で、ふたりの初めての出会いが語られる。父は娘を捜す。人形のように大事に連れ帰る。娘は、見知らぬその人に、懐かしさを感じる。そして、しっかりとしがみつく。そこにあるのは、普通の「愛情」である。
最終章を読んだあと、第一章に戻る人は多いのではないかと思う。そのまま、普通の人生を親子として過ごすこともできたのに。きっと仲のよい親子となっただろう。それなのに、父のゆがんだ過去のため、娘の過去もゆがんでいく。父と娘のあまりに忌まわしい関係を再び読み、失われてしまったはずの普通の生活を嘆く人が多いように思う。
第一章で、娘は新たな人生を歩むことを決意する。ようやく父からの呪縛が解ける。遅すぎる自立である。しかし、一緒に育ってきた影響は残っていて、娘は自分の中に、去っていった父の影を見る。清算できない過去が、これからも彼女についてまわることを予感するかのように、嵐の気配がやってくる。
結婚後の、その後の二人については何も語られない。おそらく、苦労の多い人生となるだろう。
親は子供に深い影響を与える。主人公の「花」は、その影を断ち切ることができるのだろうか?
よい作品だったと語ると、モラルに欠けていると言われそうで、ちょっとこわいのだけれど。私にとっては、考えさせられる作品であった。
ただ、直木賞受賞作として図書館に並ぶというのは、青少年の育成には悪いんじゃないかなと。そう思える作品である。親が読むべきなのかもしれませんね。
近親相姦が色濃く描かれていて、そのシーンには生理的な嫌悪感を覚えるので、賛否両論の作品である。しかし、作者が本当に描きたかったことは、「虐待の連鎖」かと思う。「親が与える子」への影響は強い。悪い影響を与えられた場合に、どういう結末がやってくるのか?そういったことではないかと思う。
主人公である「花」が結婚する章から始まる。結婚を控えているのに、父親の「惇悟」への愛情が語られる。そして、暗い過去が示唆される。なぜ、このふたりはこんなふうに、ひっそりと生きていたのか。その理由が過去にさかのぼりながら明かされていく。そこには、不幸な生い立ちがあり、二人だけの生活を守るために犯した罪の記憶がある。忌まわしい過去であるが、なぜか現実感に乏しい。
各章のタイトルに、その章を語る人の名前がさりげなく告げられている。完全な一人称であるがゆえに、本来なら同時並行で起こっているはずの、現実的な処理や人間関係等があっさり無視されている。たとえば、殺人の証拠を消すことや、当然起こるはずの事情聴取についての記載がないなど。現実感に欠けたまま話は進行していく。なので、この近親相姦もまったくの虚構であるという印象を持つ。だからこそ最後まで読めたように思う。
そのかわりに散りばめられてるのが、五感への訴えだ。いわゆる、情景や音や匂い。破滅を示唆する雷鳴の音、雪や海の情景、雨の匂い。そういったものが各シーンでタイミングよく散りばめられている。その情景は時に美しすぎ、また現実感が乏しくなる。そういった手法をとっているように思う。
最終章で、ふたりの初めての出会いが語られる。父は娘を捜す。人形のように大事に連れ帰る。娘は、見知らぬその人に、懐かしさを感じる。そして、しっかりとしがみつく。そこにあるのは、普通の「愛情」である。
最終章を読んだあと、第一章に戻る人は多いのではないかと思う。そのまま、普通の人生を親子として過ごすこともできたのに。きっと仲のよい親子となっただろう。それなのに、父のゆがんだ過去のため、娘の過去もゆがんでいく。父と娘のあまりに忌まわしい関係を再び読み、失われてしまったはずの普通の生活を嘆く人が多いように思う。
第一章で、娘は新たな人生を歩むことを決意する。ようやく父からの呪縛が解ける。遅すぎる自立である。しかし、一緒に育ってきた影響は残っていて、娘は自分の中に、去っていった父の影を見る。清算できない過去が、これからも彼女についてまわることを予感するかのように、嵐の気配がやってくる。
結婚後の、その後の二人については何も語られない。おそらく、苦労の多い人生となるだろう。
親は子供に深い影響を与える。主人公の「花」は、その影を断ち切ることができるのだろうか?
よい作品だったと語ると、モラルに欠けていると言われそうで、ちょっとこわいのだけれど。私にとっては、考えさせられる作品であった。
ただ、直木賞受賞作として図書館に並ぶというのは、青少年の育成には悪いんじゃないかなと。そう思える作品である。親が読むべきなのかもしれませんね。








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